ピアノの発表会は、日頃の努力と音楽への想いを披露する晴れ舞台。
せっかくステージに立つなら、テクニックだけでなく「聴き映え」にもこだわって選曲したいものです。
中級者の場合、ある程度の技術は身についている一方で、より多彩な表現力や選曲センスが次のステップへと導くカギとなります。
本記事では、中級レベルで挑める「発表会に映える」ピアノ曲を24曲厳選し、選曲のコツや練習のポイントも合わせてご紹介。
クラシックはもちろん、印象派や近現代、ポップス音楽まで、幅広いジャンルから選びました。
発表会という特別な場で、あなたの演奏をより魅力的に引き立てる曲選びの参考にしてみてください。
中級者が発表会で求められる「聴き映え」とは
中級者になると、譜読みや基本的なテクニックは身に付き始めます。
その先で求められるのが「聴き映え」です。
これは、単に正確に音を出すだけでなく、曲が持つ物語性や情緒、色彩感を引き出し、聴衆に深い印象を残すことを意味します。
音色の微妙な違い、ダイナミクス(強弱)の緩急、ペダリングによる響きのコントロールなど、細やかな表現が鍵となります。
曲選びのポイント
- 得意なスタイルを選ぶ:
メロディを歌うのが得意ならロマン派の叙情的作品を、リズム感が得意ならバロックやジャズ風の曲など、自分の強みを生かす曲がよいでしょう。 - 会場・聴衆を考える:
小規模な発表会なら、繊細な小品が映えるかもしれません。大ホールや華やかな場なら、明快でドラマチックな曲も効果的です。 - 難易度と演奏時間のバランス:
あまりに長く難解な曲は練習コストが大きくなりがち。5分程度で中級者が十分表現できる範囲の曲が理想です。
発表会聴き映えするおすすめピアノ曲24選(中級者向け)
ショパン「ノクターン 第2番 Op.9-2」
柔らかな旋律が夜想曲らしい優雅さを醸し出します。
中級者でも弾ける難易度ながら、右手のメロディを歌い、左手のアルペジオを滑らかに紡ぐことで、美しい“歌心”を表現できます。
ペダリングで響きを調整し、息の長いフレージングを心がけましょう。
ショパン「小犬のワルツ」Op.64-1
軽快で華やかなワルツ。
テンポは速めですが、実は音域も限られ、手の動きは比較的シンプルです。
左手の伴奏を軽く弾き、右手メロディを浮き立たせることで、軽やかな“踊る小犬”のイメージを演出できます。
短い曲なので集中力を維持しやすい点も魅力。
シューマン「トロイメライ」(『子供の情景』より)
夢見るような叙情的メロディが印象的。
決して派手さはないですが、心に染み入るような静かな表現力が求められます。
弱音のコントロールや内声の処理に気を配り、静けさの中に深い感情を滲ませることが、聴き手の胸を打つポイントです。
メンデルスゾーン「無言歌集」より「春の歌」
明るく軽やかな旋律が、まるで春風に包まれているような曲。
中級者にも弾きやすいテクニックでありながら、フレーズの起伏とリズミカルな躍動感で季節感を届けられます。
ペダルは控えめに、清潔感のあるサウンドを心がけましょう。
バッハ「インヴェンション 第8番 F長調 BWV779」
バロックらしい透明感があり、二声の対話が魅力です。
難易度は高くないものの、声部の独立性やアーティキュレーション(スタッカートやレガート)を丁寧に扱うことで、豊かな表情を生み出せます。正確なリズムと明快な発音がポイント。
バッハ「平均律クラヴィーア曲集」より プレリュード(Cメジャー等)
プレリュードはシンプルな和音やアルペジオが中心で、和声の美しさをストレートに伝えられます。
ペダルによる響きの調整や、各和音のバランスが試されるので、音色の磨き上げが演奏の質を左右します。
ドビュッシー「アラベスク 第1番」
印象派の代表的な小品。流れるような旋律と、微妙に溶け合う和音が幻想的な雰囲気を醸します。
メロディを際立たせつつ、淡い色彩感を失わないよう、ペダルやタッチを繊細にコントロールしましょう。
ドビュッシー「月の光」(『ベルガマスク組曲』より)
世界的に有名な名曲。静かな冒頭から、徐々に広がる光のベールを描き出すような演奏が求められます。
大きく歌う箇所もありますが、全体的には柔らかいタッチと響きのニュアンスがカギ。表情豊かなダイナミクスで“光と影”を演出します。
ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」(ピアノ版)
気品あふれるメロディが繰り返され、古典的な趣と近代和声が交錯します。
難易度は中級でも取り組める範囲で、ゆったりとしたテンポの中で響きを豊かに紡ぐと、聴衆にエレガントな世界を提示できるでしょう。
フォーレ「パヴァーヌ」(ピアノ編)
フォーレ特有のフランス的エスプリと柔和な和声感が満ちています。
メロディはなめらかで、伴奏は比較的単純。丁寧に音を繋げ、和音の響きを慈しむように弾くと、優雅な雰囲気を醸し出せます。
スカルラッティ「ソナタ K.380」
小さなソナタですが、はっきりとしたリズムと軽快な指さばきが聴き映えします。
バロックながらロマン派の名曲ほどのペダリングは必要なく、明確な指づかいでクリアな音を出すことが重要。
アクセントやアーティキュレーションで個性を際立たせましょう。
シューベルト「即興曲 Op.90-3」
緩やかな三拍子に乗せて、優雅で哀愁のあるメロディが漂います。
右手メロディの歌わせ方や、左手の分散和音の均一な響きが要求され、細やかな表現力がポイント。
少し長めの曲なので、構成を把握し、ドラマティックな起伏を生み出すと聴衆を惹きつけられます。
ベートーヴェン「エリーゼのために」
有名すぎるほど有名な曲ですが、だからこそ印象的な演奏で差をつけられます。
ペダルを乱用せず、シンプルな美しさを大切にしましょう。
メロディラインを丁寧に歌い、細かな装飾音やアルペジオをクリアに弾くと、ありきたりでない洗練された演奏に。
チャイコフスキー「甘い夢」(『子供のアルバム』より)
ロシア的なメランコリーが漂う短い小品。
メロディをしっとりと歌わせ、穏やかで優しい空気感を出すと心地よい余韻を残せます。
中級者に丁度良い難易度で、音数も少なめなため、音色の違いにこだわる絶好の機会です。
サティ「ジムノペディ 第1番」
極めてシンプルな旋律と和音の繰り返しですが、その中に深い静寂と詩情があります。
間(ま)の取り方、音の持続時間、ペダルのほんのわずかなニュアンスで印象が激変。
ミニマルな中でどれだけ表現できるかが試されます。
グリーグ「抒情小曲集」より「アリエッタ」
北欧の清澄な自然を感じる一曲。メロディは素朴で短めですが、一音一音を慈しむように弾くと、透明感あふれる世界が広がります。
ペダルは控えめに、和音や旋律のニュアンスを練り上げてください。
ガーシュウィン「プレリュード第2番」
ジャズ要素を含む近代的な和声が魅力。
ブルージーなムードと独特なリズム感を味わいながら、単なるクラシックとは異なるアーティキュレーションに挑戦できます。
ペダルやダイナミクスで“揺らぎ”を与え、粋な雰囲気を演出すると聴き映えします。
ギロック「ワルツ」
優しく美しい旋律で、ワルツ特有の軽やかさを味わえる一曲。ギロック作品は子供から大人まで楽しめる音楽性があり、中級者でも表現力を伸ばせます。
フレーズ感を大切に、円舞曲の優雅さを引き出しましょう。
ベートーヴェン「悲愴」第2楽章
有名な「悲愴」ソナタの中でも抒情的な楽章。静かな感情の深みと、内省的な雰囲気が漂います。
メロディの歌わせ方と内声処理がカギ。
ペダルで響きを整え、フレーズごとの情緒変化を意識させることで豊かな表現力を養うチャンスとなります。
バルトーク「ルーマニア民俗舞曲 Sz.56」
短い曲が集まった組曲で、民族的リズムと独特の和声が新鮮。
中級者にも取り組みやすい長さで、音楽的刺激が豊富です。
不均等なリズムや独特の旋律運びを、「ダンスする姿」をイメージすると◎。
アーティキュレーションとダイナミクスを細かく指示し、表現の幅を広げましょう。
ショパン「幻想即興曲」
やや上級寄りの中難度作品ですが、中級上位レベルの生徒には大きな挑戦となります。流麗なアルペジオと情熱的な中間部が演奏効果抜群。
テクニックが必要なため、無理のないペースで練習計画を立てることが大切。
右手の速いパッセージの滑らかさや中間部の美しい歌い方を丁寧にしましょう。
モーツアルト「きらきら星」
誰もが知る旋律を装飾音や和声付けで発展させたアレンジを選べば、聴衆も親しみやすく、演奏効果も得やすい。
熟知したメロディを素材に、強弱や音色変化など表現練習を行うと、アーティスティックなアプローチを学べます。
滝廉太郎「荒城の月」(ピアノアレンジ)
日本人に馴染み深い旋律で、郷愁を誘う名曲。
繰り返しのフレーズを微妙に表情を変えたり、和音の響きを丁寧に醸し出したりして、ドラマティックな展開を作ると印象に残ります。
日本の風景を思い描きながら音を紡ぐと、聴衆の心を掴みやすいでしょう。
季節感ある小品(「さくらさくら」変奏、クリスマスキャロルなど)
発表会の開催時期に合わせた曲は、観客の記憶に残りやすいです。
工夫次第で、多彩な表情を引き出せます。
発表会当日に向けたポイント
- 練習計画の明確化:
発表会までにクリアすべき課題を明示し、目標を段階的に設定します。 - ステージマナーの指導:
出入りの仕方やお辞儀のタイミングなど、非音楽的要素も練習。先生は生徒が自信を持ってステージに立てるようサポート。 - 緊張対策:
人前で弾くシミュレーションをレッスン内で行ったり、少人数の前で弾く機会を設けたりするとよいでしょう。
まとめ:中級レベルから飛躍するためのレパートリー選び
中級者だからこそ、発表会での選曲や表現力が今後の成長を左右します。
ここで紹介した20曲は、いずれも中級レベルで挑戦でき、表現力を磨くのに最適なレパートリーです。
じっくり練習を重ね、曲の持つ世界観を掴み取りましょう。
練習の過程で培った技巧や表現力は、発表会当日、煌めく音色や深い情感としてステージに花開きます。
あなたの音楽が、聴衆の心に余韻を残し、中級者から次のステージへと飛躍する一歩となることを願っています。